農園日記

芽がそろった春、初めての通販へ|小出農園の2020年

初めて出荷できた2019年は、台風の被害にも向き合う年でした。翌2020年、父が春の畑で喜んだのは、枝に芽がそろって出ている光景です。いちじくを育て、収穫する。その土台が整ってきたことで、農園の仕事は「待ってくださる方にどう届けるか」へと広がっていきました。

芽が出る。それだけで、うれしい春

前年の春、初めて冬を越した木のおよそ半分から芽が出ませんでした。芽がなければ、その年に実をつける枝も育ちません。初収穫への期待を抱いて畑を見る時間が、木の無事を心配する時間になっていたのです。

その経験から冬の守り方を変え、藁にアルミ蒸着フィルムを重ねました。2020年4月26日の投稿では、第1農園で前年に伸びた枝すべてから芽が出ていると報告しています。父は毎日、畑を見回っては喜んでいました。何も起きなかった春ではなく、前年の失敗に手を打った結果を、一枝ずつ確かめる春でした。

芽が出た先には、枝を育て、実をつけてもらう仕事が待っています。それでも、最初の一歩をそろって踏み出せたことは大きい。冬にかけた手間が、春の畑で目に見える形になりました。

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畑の寒さを、数字で確かめる

同じ市原市でも、天気予報の気温と畑の気温は同じではありませんでした。農業事務所の協力で、地表から約50センチの株元の温度を測り、2月から4月初めの記録をグラフにしています。

畑ではマイナス7度近くまで下がる日があり、4月初めにも氷点下を記録しました。発表される地域の気温より低いことが、数字で見えてきたのです。「寒い場所らしい」という感覚だけでは、防寒をいつ始め、いつ外すかを決めきれません。

父はこの年、次の冬は12月に入ったら藁囲いを始め、年末にはフィルムを巻く方針を記しました。外すときも、暦だけで一度に片付けず、遅霜の心配と予報を見て判断する。畑の実測値が、翌年の作業を考える材料になっていきました。

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株元で測った気温をグラフにし、地域の発表値と比較した記録。

第3農園の準備が始まる

1月には、第1農園20アール、第2農園3アールに加え、15アールの第3農園をつくる計画を発表しています。将来は夫婦二人で農園を営むことを見据え、バナーネなどの苗を植える準備を進めました。

4月の植え穴づくりでは、水田から転作した第1農園との違いに目を向けています。第3農園はもともと畑で、雨の翌日にも水がたまっていない。土も柔らかく、日当たりと風通しもよいことから、この時点では畝を上げない判断でした。

井戸と電気があるので、自動で水をやる仕組みもつくれそうだ。一方で、台風や獣への備えにはネットが必要だろう。新しい畑への期待と課題が、同じ投稿に並んでいます。この場所では翌年、苗を植え直すために土づくりと高畝の整備をやり直すことになります。最初の見立てを、その後の生育を見て変えていく過程も農園の歩みです。

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植え付け前の第3農園。この時点の土の状態を見ながら準備を進めていました。

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9月1日、初めての箱を送り出す

前年から購入の問い合わせはありましたが、凍害や台風の影響で通販を実現できませんでした。7月29日、ようやく数量を限った予約販売の案内を出します。最初からたくさん受けるのではなく、収穫に合わせて発送する形でのスタートでした。

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農園のInstagramより(2020-09-01)

そして9月1日、初めての2件を発送。父は前日から緊張していたと書いています。朝採った完熟いちじくが翌日には届く。木の上で育ててきた時間を、傷みやすい実のまま箱につめて送り出す初日です。

BASEへの出店には子どもたちも協力しました。畑で育てる人、販売の仕組みを整える家族、箱を届ける配送の仕事がつながって、農園から離れた場所の食卓にも届けられるようになりました。最初の予約期間分が完売したことも、この日の投稿で報告しています。

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品種を知る試食が、食べ比べにつながる

9月には第2農園で、カドタ、セレスト、ブリジャソットグリースを初収穫しました。ただ、採れたからすぐに販売、とは進みません。まずは自分たちで食べ、いつ採るとおいしいのかを確かめています。

カドタの強い甘さ、セレストの薄い皮と粘り、ブリジャソットグリースの甘さと酸味。それぞれに違いがあり、母も喜んで試食していました。同じいちじくという名前でも、見た目だけでは分からない個性があります。

残りは乾燥のテストにも使い、収穫量が安定したら詰め合わせを試そうと考えました。年末の振り返りには、5種類の詰め合わせ販売を始められたことが記されています。品種を増やすことが、そのまま食べ比べる楽しみを届ける仕事につながった年でした。

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第2農園の初収穫。味と熟度を確かめるところから始まりました。

生の季節の先に、ドライいちじくを

生のいちじくが終わると寂しくなる。そんな母の「いちじくロス」も、商品づくりの出発点になりました。10月には店頭で、11月には通販で、ドライいちじくの販売を始めます。

乾燥には24時間かかり、試せるのは一日に一度。原料の熟度、皮のむき方、切り方、温度、換気、時間を変えながら、好みの色と食感を探しました。当時の設備では一日に10袋分ほどしかつくれず、完成してからも少量ずつの販売です。

年末、父は台風に遭わず、想定以上に収穫できた一年を振り返っています。通販のお客様から届く感想や料理の写真、売場でかけてもらう言葉も、畑を続ける励みになりました。木が育ち、届け方が増え、食べてくださる方の様子が見える。2020年は、農園と食卓の距離が近づいた一年でした。

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熟度や乾燥条件を試しながら商品化したドライいちじく。

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農園の最新情報はInstagram、販売状況は公式オンラインショップをご覧ください。

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いちじく農家の長男

小出農園の長男です。いちじくについて分かりやすく伝えられるようがんばります。

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