畑を広げれば、それだけ仕事も増えます。収穫量を増やしたい一方で、草刈りや水やりに追われて木を見る時間が足りなくなっては困る。2021年は、第3農園をつくり直しながら、いちじくにも、世話をする両親にも合う農園の形を考えた一年でした。
「もっと欲しい」に、どう応えるか
前年に通販が始まり、売場でも販売量を増やしてほしいという声をいただくようになりました。うれしい要望ですが、数だけを追えばよいわけではありません。年初の方針には、お客様の評価が高かった品種を中心に、おいしさを落とさず販売量を増やしたいと書かれています。
そのために挙げたのが、防風や獣害に備えるネット、水やりの設備、防草シートです。販売面では贈り物に適した箱や配送方法を考え、料理の提案にも取り組む。育てる段階から食べるところまでを見ながら、一年の仕事を組み立てていました。
前年の収穫がよかったから、そのまま続ける。そんな年ではありませんでした。次の災害に備え、これから年を重ねても管理できるように、収穫期の外側で畑を変えていくことにしたのです。
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育たなかった苗を抜き、土からやり直す
第3農園は、前年に植えた苗がうまく育たず、すべて抜いて整え直しました。もともと畑で、水はけがよさそうだと考えていた場所でも、思ったようには育ちません。土づくりと畝づくりを改めて進めることになります。
2月に完成した畝は、高いところで約50センチ。通路も広く取り、日当たりと作業のしやすさを重視しました。同じ面積にできるだけ多く植えるより、一つひとつの木を管理しやすい配置を選んでいます。
この年の第3農園の写真は、植え付け前の地面から農園ができていく記録でもあります。前の年に決めた方法を変えるのは、手間のかかる仕事です。それでも、苗を戻す前に畑の土台を整えることを優先しました。
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高いところで約50センチの畝。通路の広さも大切にしました。
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ネットとシートで、畑の骨組みをつくる
3月、第3農園の多目的防災網が完成しました。風への備えに加え、枝を支える誘引棚も設けています。木の仕立て方に合わせて棚の幅を変え、将来、防鳥ネットを張るためのワイヤーも用意しました。
4月には全面に防草シートを敷きます。使ったのは幅4メートルの大きなシート。重く、広げて敷くこと自体が大仕事でしたが、植え付けた後の草の管理を減らすための準備でした。
2019年の台風で壊れたハウスの建て替えも、この整備と重なっています。父は、土をつくり、畝をつくり、ネットが立つにつれて「農園らしくなってきた」と記しています。木を植える前から、数年先の作業を考えた設備が増えていきました。
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防風ネットと誘引棚を整備した第3農園。
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水やりを自動にしても、調整は続く
4月末には自動灌水装置を導入しました。第3農園には井戸と電気があり、水を与える時間、回数、量を設定できます。肥料も水に混ぜて送る仕組みで、暑い時期に人が一回ずつ水をやる負担を減らせるようになりました。
ただし、装置を付けたら管理が終わるわけではありません。8月には土壌水分測定器を導入。梅雨明けに水と液肥の量を増やしながら、この畑に合う設定を探していました。春に必要だった量と、夏の成長した木が必要とする量は違います。
父の投稿に繰り返し出てくるのは、勘だけに頼らず確かめたいという考えです。前年は気温を測り、この年は土の水分を測る。設備は人の代わりに同じ作業を続け、両親は木を見て設定を変える。農園の仕事の分担が、少し変わり始めました。
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土壌水分を測り、自動灌水の量を調整していきました。
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5か月後、63本の苗が見せた成長
5月に植えたのは、バナーネ、ホワイトゼノア、ブリジャソットグリース、ドリーミースイート、桝井ドーフィンの計63本。10月には長い枝で約2メートルまで伸びていました。
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農園のInstagramより(2021-10-09)
伸びるままに任せず、芽かきをしながら、自然樹形の木は3本、一文字仕立ての木は2本の枝に整えていきます。翌年に収穫するためには、その実を支える木の形をこの年につくっておく必要がありました。
同じ頃に別の畑へ植えた苗と比べても、第3農園はよく育っていると父は感じていました。自動灌水と液肥の効果を実感した記録です。一方で、この時点で評価できるのは木の成長まで。どれだけ実が採れ、どんな味になるかは、翌年の楽しみとして残されていました。
食べ比べを、料理の楽しみへ
畑の整備と並行して、詰め合わせいちじくの通販が始まりました。年末には想定以上に販売が伸びたと振り返っています。違う品種を一箱にすることで、一度の注文でも味の違いを楽しんでいただけるようになりました。
農園のパンフレットも完成し、レストラン ベルクールの佐藤シェフに考えていただいたレシピを売場やInstagramで紹介しました。ケーキ店やカフェとの新しい取引も始まっています。そのまま食べるだけでなく、料理やお菓子に使った姿から、農園もいちじくの楽しみ方を教わっていました。
年末には3農園で約40アールとなり、ネットや防草シート、第1農園の灌水設備も整いました。5品種のドライいちじくは試作の段階です。すべてが完成した一年ではありませんが、次の収穫と商品づくりを支える準備が、地面の上にも食卓の側にも増えた一年でした。
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農園の最新情報はInstagram、販売状況は公式オンラインショップをご覧ください。